至高天(エンピレオ)

神が直接存在する最も高い天。純粋な光と愛に満ちた場所で、ダンテはここで神の姿を垣間見る。天使たちが白いバラの形に集まり、永遠の至福の中にいる。
至高天は物理的な場所ではなく、純粋な光と神の愛で構成される精神的な領域。
永遠の光よ、汝のみに宿り、汝のみを理解し、汝自身によって理解され愛される光よ。
— 神曲 天国篇 第33歌
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藤谷道夫
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神が直接存在する最も高い天。純粋な光と愛に満ちた場所で、ダンテはここで神の姿を垣間見る。天使たちが白いバラの形に集まり、永遠の至福の中にいる。
至高天は物理的な場所ではなく、純粋な光と神の愛で構成される精神的な領域。
永遠の光よ、汝のみに宿り、汝のみを理解し、汝自身によって理解され愛される光よ。
— 神曲 天国篇 第33歌

最も速く回転する天球。神の愛によって動かされ、下位のすべての天球に運動を伝える。時間と空間の概念が始まる場所。
中世の宇宙観では、原動天が全ての天体運動の究極の原因とされた。

恒星が固定された天球。ダンテはここから地球を見下ろし、人間の世界がいかに小さいかを悟る。信仰・希望・愛の三徳について問われる。

観想的生活を送った魂が住む天。黄金の梯子が上方へ伸び、魂たちが昇降する。静寂に包まれた瞑想の場所。

正義を行った君主たちの天。魂たちが集まって鷲の形を作り、正義について語る。神の裁きの不可思議さが示される。
鷲はローマ帝国と神聖な正義の象徴。魂たちが一つの声で語ることで、正義の統一性を表す。

信仰のために戦った戦士たちの天。魂たちが輝く十字架を形成する。ダンテの先祖カッチャグイダがここに現れ、ダンテの運命を予言する。

知恵に優れた神学者・哲学者たちの天。魂たちが光の冠を形成し、知恵の光を放つ。トマス・アクィナスとボナヴェントゥラが登場。

愛に生きた魂たちの天。地上では恋愛に情熱を注いだが、その愛を神への愛に昇華させた者たちが住む。

地上で名誉のために善行を行った魂の天。動機は完全ではなかったが、善を成した者たちが住む。
ユスティニアヌス帝は527-565年に在位し、ローマ法大全を編纂してヨーロッパ法の基礎を築いた。

天国の最下層。誓願を破らざるを得なかった魂たちが住む。ベアトリーチェがダンテを導き始める場所。

物語の始まり。35歳のダンテは人生の半ばで「正しい道」を見失い、暗い森の中で迷っている自分に気づく。ここから地獄・煉獄・天国への旅が始まる。
我、人生の道の半ばにして、正しき道を失い、暗き森の中にありき。
— 神曲 地獄篇 第1歌
「35歳」は当時の平均寿命70歳の半分。暗い森は精神的な迷いと罪の状態を象徴する。

煉獄山の頂上にあるエデンの園。アダムとエバが追放された場所。ここでダンテはベアトリーチェと再会し、天国への旅が始まる。
地上楽園には二つの川が流れる。レテ川は罪の記憶を消し、エウノエ川は善行の記憶を蘇らせる。
ここにて人間の幸福の根を見よ。
— 神曲 煉獄篇 第28歌

煉獄最上部。色欲の罪を清める魂たちが炎の中を歩く。浄化の火を通過することで、地上楽園に至る。
浄化の炎は地獄の罰の火と異なり、魂を清めるための愛の炎。ダンテ自身もこの火を通過しなければならなかった。
Summae Deus clementiae(至高の慈悲の神よ)
— 魂たちが歌う賛歌

美味しそうな果実のなる木があるが、魂たちは食べることができない。飢えと渇きを通じて貪食の罪を清める。
逆さまに生える木は禁断の果実を思わせ、手の届かない果実への渇望が浄化となる。
フォレーゼはダンテと「テンツォーネ」(詩の論争)を行った親友で、煉獄での再会は感動的な場面。

貪欲と浪費の罪を清める場所。魂たちは地面にうつ伏せになり、世俗的な執着を捨てる。
地面にうつ伏せになるのは、地上の富に目を向けすぎた罪への対置。天を仰ぎ見ることができない。
Adhaesit pavimento anima mea(わが魂は地に付きぬ)
— 詩篇119篇25節 - 魂たちが詠唱する

善への熱意を欠いた魂が清められる場所。魂たちは絶え間なく走り続け、かつての無気力を償う。煉獄山の中央に位置する。
怠惰は七つの大罪の中央に位置し、煉獄でも山の中間点。善への熱意の欠如は他の全ての罪の根源となりうる。
ウェルギリウスはここで「愛の理論」を説き、すべての罪と徳が愛のあり方に基づくことを教える。

怒りの罪を清める場所。濃い煙が立ち込め、視界が遮られる。忍耐と温和の徳を学ぶ。
濃い煙は怒りが理性の光を曇らせることを象徴。視界がないのは、怒りが真実を見えなくさせることを表す。
汝らには光と自由意志が与えられている。
— 神曲 煉獄篇 第16歌(マルコ・ロンバルド)

嫉妬の罪を清める場所。魂たちは鉄の針で瞼を縫い付けられ、他人を羨んだ目を閉じさせられる。
縫い付けられた瞼は、他人の幸福を羨んで見た目を閉じさせる罰。盲目となることで内なる光を見出す。
Litaniae Sanctorum(諸聖人への連祷)
— 嫉妬者たちが詠唱する祈り

煉獄最下部の冠。傲慢の罪を清める魂たちは重い石を背負い、謙遜を学ぶ。地面には傲慢で滅んだ者たちの彫刻がある。
傲慢が最下層にあるのは、それが全ての罪の根源だから。重い石を背負うのは、高慢な態度を物理的に押し下げる。
おお、虚しき栄光よ!人間の才能はなんと短命か。
— 神曲 煉獄篇 第11歌(オデリージ)

煉獄山の麓。浄化の準備期間を過ごす魂たちがいる。破門された者、怠惰だった者、臨終で悔い改めた者など。
煉獄前域で待つ時間は、生前に悔い改めを遅らせた時間に等しい。臨終での悔い改めには長い待機が必要。
マンフレーディは教皇に破門されたが、神の慈悲は教会の裁きより大きいことが示される。

煉獄への入口。天使が剣で門を守り、ダンテの額に7つの「P」(Peccatum=罪)を刻む。三段の階段を経て門に至る。
7つの「P」は七つの大罪を表し、各冠を通過するごとに一つずつ消えていく。
三段の階段は告解の三段階を象徴。白い大理石(良心の審査)、黒い石(罪の告白)、赤い斑岩(贖罪)。
入れ。だが振り返る者は外に戻されることを知れ。
— 神曲 煉獄篇 第9歌(門番の天使)

地獄への入口に刻まれた有名な銘文「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」。ダンテとウェルギリウスの冥界への旅が始まる。
この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ(Lasciate ogne speranza, voi ch'intrate)
— 神曲 地獄篇 第3歌

善にも悪にも与しなかった日和見主義者たちの場所。天国にも地獄にも属さず、永遠に虻に追われながら走り続ける。

洗礼を受けずに死んだ者、キリスト以前の高潔な異教徒がいる場所。苦痛はないが、神を見ることなく永遠に過ごす。
リンボの概念はカトリック神学特有のもので、洗礼前に死んだ幼児の魂の行き先として考えられた。

肉欲に溺れた者たちが暴風に吹き荒らされる。パオロとフランチェスカの悲恋の物語が語られる場所。

大食いの罪人が冷たい雨と雹の中、泥の中に横たわる。三つの頭を持つ猛獣ケルベロスが番人を務める。

浪費者と貪欲な者が互いに重い財宝を転がしながらぶつかり合う。プルートスが番人。

怒りに身を任せた者たちがスティクス河の泥沼で互いに攻撃し合う。怠惰な者は泥の底に沈む。

下層地獄の入口を守る城壁。堕天使たちと復讐の女神が門を守る。天使の介入なしには通れない。

異端者たちが燃える墓の中に閉じ込められている。エピクロス派や魂の不滅を否定した者がここにいる。

三つの環に分かれる。他者への暴力者は血の河に、自殺者は木に変えられ、神への暴力者は砂漠で火の雨を受ける。
自殺者は体を自ら傷つけたため、最後の審判でも体を取り戻せず、木として永遠に留まる。

自殺者が木に変えられ、ハルピュイア(鳥女)に葉を食いちぎられる。血と言葉が枝から滴る。

「悪の袋」と呼ばれる10の濠からなる詐欺者の圏。媚び諂う者、シモニア、占い師、汚職者、偽善者などが罰せられる。

聖職売買(シモニア)を行った聖職者たちが逆さまに穴に埋められ、足を火で焼かれる。教皇ニコラウス3世がいる。

盗人たちが蛇に襲われ、噛まれると灰になり再び人の形に戻る。あるいは蛇と融合して異形の姿になる。

詐欺的な助言をした者が炎に包まれる。ウリッセ(オデュッセウス)が最後の航海を語る有名な場面。
諸君は獣として生きるために生まれたのではない。徳と知識を追い求めるために生まれたのだ。
— 神曲 地獄篇 第26歌(ウリッセの演説)

地獄の最下層。裏切り者が氷に閉じ込められる。四つの領域に分かれ、最も重い裏切りがここで罰せられる。
火ではなく氷で罰するのは、愛の欠如(冷たさ)が裏切りの本質であることを示す。

ウゴリーノ伯爵が宿敵ルッジェーリ大司教の頭蓋を噛み続ける。彼は塔に幽閉され、子供たちと共に餓死させられた。

地獄の最深部、宇宙の中心。三つの顔を持つ巨大なルチフェロが氷に腰まで埋まり、三人の大罪人(ユダ、ブルータス、カッシウス)を噛み砕く。
三つの顔は神聖な三位一体のパロディ。赤は憎悪、黄は無力、黒は無知を表す。
中世の宇宙観では地球が宇宙の中心であり、その最も低い点にサタンがいるとされた。
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